すっと伸びてきた手に、添えられた言葉は何も無かった。
ただ、皆と一緒に歩いてて。
いつの間にか、隣には蔵が来て。
2人きりで話すわけじゃなく、かわるがわる飛び出す話題に横から相槌を打つ。
この顔ぶれの中で、偶然隣に彼が居る。
ただそれだけだった。
急に前に躍り出た1つの影に、皆の関心が一斉に動く。
はしゃぐ後輩に、振りまわれるように輪が解けていって。
少し離れたところで、また輪を成していく。
無邪気な笑顔につられるように笑った。
そうしたら。
そっと指先が絡まった。
横を見ることくらい簡単なはずなのに、私はそのまま顔を動かせなくて。
視界の端に僅かに映る彼もまた、まっすぐ前を向いたまま。
前触れなく添えられた指先は、熱くもなく、かと言ってひんやりとしているわけでもなく。
きっと同じくらいの体温なんだ、と声を遠くに感じながらぼんやり思った。
そうしている間にも、手は確かめるようにゆっくりと動き。
触れている指先は、手の甲を優しく撫でていく。
目の前の騒ぎ声が数テンポ遅れて頭に届くのに、手の感触はよりクリアになって。
どうして良いのか分からない、でも振り払う気は毛頭無くて。
それを見透かしたように、包み込む手に力がこもる。
次第に伝わってくる温もりに、肩の力が抜けていくのを感じた私は。
応えるように、彼の手を握り返していた。
簡単な事だった。
お互いの気持ちは、もう気付いていたのだから。
ようやく動かせた視線の先。
受け止めてくれたのは、今まで見たことも無いような、優しい顔だった。
言葉なんていらない。
その目が全てを語るから。
ただ それだけで
輪に戻る2人の距離は自然に縮まった。
END
2009/10/14
ごめんなさい夢です。私のリアルに見た夢です(爆笑)
もちろん多少捏造入ってますが・・・!
あんだけ書くの時間かかるくせにこれは1日で書き上げました。
はい、そこ!子供達を見守る夫婦みたいとか言わない!(笑)